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【ヒロアカ】re:Hero

第17章 死穢と光の狭間で



荼毘は、懐から小さな銀のペンダントを取り出して、私の目の前で揺らした。

「落としてったんだよ。あの夜、お前が必死だった時にな」

その羽根は、私が啓悟の羽を使って作った、世界にひとつだけのお守りだった。

『……返して』

「ほらよ」

軽く投げ渡される。
私は慌てて手を伸ばして、それを胸に抱え込んだ。

確かに、私のだった。
焦げ跡と少し歪んだ形――全部、あの夜のまま。

「……ま、これはオマケだ。今日のメインは別にあってな」

『……なにが、目的?』

「ただ知らせに来ただけだよ。お前が大事にしてる“あいつ”、
 ……実は、俺と繋がってんだぜ?」

『……っ、え?』

「ヒーロー様は忙しいからな。公安か何かに飼われてるらしいけど……
 裏でこそこそ動いてるのは、どうやら俺らと似たような方向みたいだ」

冗談のように笑いながらも、
その声の奥にある確信が、胸を冷たく打った。

息が詰まる。

(……彼も、何か……させられてるの?)

心の奥で、知らない“不安”が広がる。

公安と、ホークスと、私。
繋がるはずのない線が、どこかで交差しているのかもしれない。

「ま、知らねぇけどな。あいつはあいつで、何か背負ってるんだろ。
 でも“表の顔”信じてると、痛い目見るぜ」

そう言って、荼毘はポケットから紙片を取り出して、ヒラヒラと振って見せた。

「気が変わったら、ここに連絡してこい。
 ……オレは歓迎してやるよ、なにより“面白そう”だからな」

私の手元に押しつけられたのは、
番号が手書きされた、くしゃくしゃの名刺の切れ端だった。

『……私は、そんなの……』

「すぐ決めなくていい。
 でも、お前の瞳……今、揺れてんぜ?」

言われた瞬間、胸が強く痛んだ。
顔を上げると、彼はもう笑っていなかった。

その瞳の奥には、
どこか同じ傷を抱えた者だけが持つ、深い底が見えた気がした。

「じゃあな、ヒーロー」

そう言い残して、荼毘はその場を後にする。
焼けるような残り香だけを残して。

私は、羽根のペンダントをきつく握りしめた。
胸が、苦しかった。

――私のここにいる意味は、何?

(……啓悟。 あなたは…何を背負わされてるの……?)

足元には確かに、くしゃくしゃの紙切れが落ちていた。
それを拾って、握る手が震えるのを――止められなかった。
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