• テキストサイズ

【ヒロアカ】re:Hero

第15章 忍び寄る影


壊理ちゃんと別れたあと、クロノに呼ばれた。

無言のまま彼の背を追い、階段を下っていくたびに、空気はどんどん重くなる。
辿り着いたのは、地下の奥……金属と薬品の匂いがこもる、どこか異様な空間だった。

部屋の中央には、無機質な装置が鎮座していて、
横には冷たく光る弾丸が、無造作に並べられている。

一発一発が、吐き気を催すほど“何か”を孕んでいた。

(……これが、“消去弾”……)

唇を噛む。
喉の奥で何かが詰まり、声にならなかった。

「来たか。」

治崎廻の声が、鋼のように響いた。
振り返ると、いつものように黒手袋を外しかけているところだった。

「これが“製品”だ。」

装置を指しながら、無表情に言い放つ。

「壊理の個性を抽出して濃縮……撃ち込めば、個性そのものを壊せる。」

淡々と告げるその声の奥に、躊躇も情けもない。
ただ、“結果”だけを語る冷徹な事実。

『……』

私は何も言えなかった。
何も言えないまま、その弾に込められた痛みを想像していた。

彼女の小さな体から絞り出された“希望の否定”。

それでも私は、ここに立っている。

「……明日、出るぞ。」

唐突に言葉を変えて、治崎は私に視線を向けた。

『……出る?』

「客と会う……相手は、“ヴィラン連合”。」

一瞬、空気が変わった。

あの名を口にした瞬間、背筋に冷たいものが走る。
思い出したくない顔たち。声。傷。爪痕。
私を“壊そう”とした者たち。

「……同行してもらう。お前がいる方が、奴らの反応が見やすい。」

(……利用されるって、分かってるのに)

それでも、私は頷くしかなかった。

「場所は旧倉庫街。時間は二十二時。」

淡々と告げられる指示の中に、どこかで“試されている”気がした。

返事は一言だけ。

『……了解です。』

治崎はそれ以上は何も言わなかった。
ただ、黒手袋をはめ直し、背を向ける。

鉄の匂いだけが残ったその場で、私はそっと、深く息を吐いた。
/ 664ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp