第15章 忍び寄る影
廊下は薄暗く、冷たい空気が肌を刺した。
目隠しに覆われて、何も見えないまま、ただ足音だけが静かに響く。
心臓がざわついて、息を整えようとしても上手くいかない。
この先に何があるのか、誰が待っているのか、考えただけで胸が苦しくなった。
「ここで止まれ。」
冷たい声が耳元に響いて、体が思わず止まった。
周りの空気が一気に濃くなって、背筋が凍る。
ゆっくりと目隠しが外されると、目の前には治崎廻が立っていた。
その鋭い視線はまるで獲物を狙う獰猛な獣のようで、自然と体が硬くなる。
「噂の“想願”か。」
彼の声には嘲笑と興味が混ざっていて、どこか遊び相手を見つけたみたいな響きがあった。
「面白そうだ。力を見せてみろよ。」
私の胸の奥に、言葉にならない緊張と覚悟が重くのしかかる。
言葉で紡ぐ代わりに、力の震えが指先から伝わってくる。
視界が少しずつ揺れて、世界が透けていく感覚。
それは、ただの力じゃなく、私の存在の証でもあった。
言葉はなくとも、私の心は叫んでいる。
“ここで終わらせるわけにはいかない”という想いが、静かに燃えていた。
そう思いながら、“想願”の力を静かに呼び起こす。
世界がゆっくりと揺らぎ始めて、透けて見えていく。
それは私を縛る鎖でもあるけれど、唯一の武器でもあった。
「よし、始めよう。」
治崎の言葉が響き、冷たい地下室の闇の中で、私は静かに力を溜めていった。