第15章 忍び寄る影
冷たい金属の感触が、肌の薄い鎖骨の下に触れる。
まるで、身体の奥にまで忍び込んできたような異物感に、思わず息を呑んだ。
『ここに……?』
震える声を喉の奥に押し込み、必死で落ち着こうとするけど、鼓動が早まって手の震えは止まらない。
ここに装置をつける意味は分かっている。心臓に近ければ反応も早い。逃げようとしたら即座に発動する“首輪”だと。
目の前の男は冷たい笑みを浮かべながら、無表情で固定する手を動かす。
皮膚に装置が密着し、ピリリと小さな衝撃が走ったような気がした。
逃げられない。
けれど、これがないと私も、大事な人たちも守れない。
恐怖が全身を締めつける。
でも、それと同じくらい、心の奥で静かな炎が灯った。
『私は選んだんだ。』
彼の笑顔と声が浮かんでくる。
この決断が彼のためであり、私のためだと信じて。
指先が机の縁を強く握り締める。
冷たい装置の重みは、自由の喪失だけじゃない。
それは、私の意志と責任の象徴でもある。
男が装置を確かめると、機械音がかすかに鳴った。
反抗も抵抗も、もうできない。
『……わかりました……』
声は掠れ、震えたけれど、決して消えない覚悟の音だった。
男は満足げに頷き、書類をまとめる。
「賢明な判断だ。ホークスも誇りに思うだろう。」
その言葉が、まるで自分を縛る鎖を更に重く締め付けるみたいだった。
息を飲み込み、ゆっくりと目を開ける。
冷たい装置の存在が、これからの苦難も救いも、すべてを一緒に背負っていく証だと胸に刻んだ。