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【ヒロアカ】re:Hero

第15章 忍び寄る影


無機質な会議室に響くのは、時計の針の音と、机の上で光る小さな黒い端末だけ。
目の前の男は笑っているのに、その笑みは冷たくて、息が詰まる。

「君の“想願”――素晴らしい個性だ。
姿形を偽れて、声も、匂いも、体温すら誤魔化せる。
でも逆に言えば、君自身を縛る鎖は何もない。」

男の指が机をコンと叩くたびに、心臓が痛む。

「だから必要なんだ、これは。
君の存在を証明するもの。そして、保険であり……首輪だ。」

『……首輪……』

喉の奥が引き攣って、声が掠れる。
男は面白そうに目を細めると、黒い端末を指でなぞった。

「無理に外そうとすれば作動する。
万が一君が逃げれば――周りの大切な人に何が起きるか、分かるな?」

優しい声なのに、ひとつも優しさを感じない。
思わず机の端を握りしめる指先が震えた。

『……私が……もし逃げたら……』

「残念だが、我々も君を止めなければならない。
君が愛してるものごと、ね。」

吐き気がするほどの言葉なのに、男の笑みは崩れない。

『……私に、選択肢は……』

「もちろんある。」

男の口元が深く歪む。

「君が“ヒーロー”でいる限り、任務をこなし、
全てを従順にやり遂げれば――誰も傷つかない。
君も、君が守りたいものも。」

カチリと指が鳴ると、小さな装置が一度だけ光った。

冷たい言葉が部屋に沈み、声にならない恐怖が胸を締めつける。
逃げ場のない約束。
でも、私が守りたいもののために、どうしても応じるしかなかった。

静かな沈黙の中、目の前の男は無言のまま小さな機械を取り出し、
その冷たい光がぽつりと部屋を照らした。

私は目を逸らし、震える手を差し出す。
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