第15章 忍び寄る影
午後の教室、窓の外ではまだ蝉が鳴いている。
だけど教壇に立つ相澤先生の声は、その暑さを一瞬でかき消した。
「ヒーロー仮免試験の合格者は知っての通りだ。これからは“ヒーローインターン”が始まる。」
静かなはずの教室に、ざわっと小さなどよめきが走った。
机の下で指先が小さく震えるのを、私は膝の上で隠す。
『……インターン……』
ヒーローとして、外の世界に出る。
プロヒーローと肩を並べて、実際に現場を経験する。
相澤先生の目が教室をゆっくりと見渡す。
一瞬、私の目の奥を射抜くみたいに視線が合った気がした。
「職場体験よりも危険度が高い分、得られるものも多い。
だが、当然リスクもある。しっかり覚悟を持て。」
横で誰かが小さく息を呑む音がした。
私も無意識に息を止めてしまっていた。
相澤先生が、ちらりと教室の扉の方を見やる。
「そこで今日は、お前らに“トップの先輩”を紹介する。
ヒーロー科最高年次の――“ビッグ3”だ。」
扉が開く音がして、差し込む廊下の光の中に、
一歩ずつ教室へと入ってくる三つの影。
先頭を歩くのは、笑顔がまぶしい金髪の少年。
その後ろに、顔を伏せたまま小さく肩をすくめている大きな少年。
そして一番後ろには、明るく手を振る、元気な声の女の子。
「わー! 1年生のみんなー!よろしくねー!」
教室に一気に柔らかい空気が流れ込んで、
周りが息をのむのがわかった。
『……この人たちが、雄英の……!』
胸の奥が熱くなる。
プロのすぐそばに立っている先輩たちの背中が、眩しくてたまらなかった。