第14章 仮免の向こう側【R18】
お土産袋を両手に抱えて、水族館の出口を出た瞬間、
少し冷たい夜風が潮の匂いを運んでくる。
『……もう、帰らなきゃだね。』
隣を歩く啓悟が、私の髪をそっと撫でて笑う。
「駅まで送るとか思っとる? 俺が?」
『……え?』
啓悟は悪戯っぽく目を細めて、私の頭におでこをコツンとくっつけた。
「攫われたらどうするっちゃ。お前が心配で俺が寝れんでしょ?」
『……ふふ、寝てるじゃん。昨日すぅすぅ寝てたよ?』
「寝かせたの想花でしょ。……責任取れよな?」
からかう声に笑いそうになって、けれど指先が自然と繋がれると、
胸の奥がくすぐったくて仕方なかった。
『……じゃあ、どこまで送ってくれるの?』
啓悟は一度だけ視線を遠くに流して、
優しい声で答えた。
「……寮の門の前まで。」
『え……そこまで?』
「当たり前でしょ。俺から離れるのは、そこまで。」
ふわりと頭を撫でて、いつもの余裕の笑顔の奥に、
“離したくない”って熱が滲んでいて――
どうしようもなく、胸の奥がまた、あったかくなる。
『……ずるいなぁ。』
小さく笑った声を、啓悟はちゃんと聞いていて、
繋いだ手を、もう一度ぎゅっと握り返した。