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【ヒロアカ】re:Hero

第14章 仮免の向こう側【R18】


イルカショーが終わった頃には、すっかり日が傾いていて、
ガラスのドームを抜けると、まだ少し肌寒い潮風が頬を撫でた。

啓悟は私の手を握ったまま、肩をすくめて笑う。
「お土産、見てく?」

『……うん!』

まだ鼓動が落ち着かないまま、館内のショップに足を踏み入れると、
柔らかい照明に照らされた棚に、ぬいぐるみやマグカップがずらりと並んでいた。

『わぁ……イルカ、可愛い……!』

ふわふわのイルカのぬいぐるみを手に取ると、
啓悟がすぐ後ろから覗き込んでくる。

「買ってく? ……つーか、買って帰れ。」

『えっ……』

「寮に置いときゃ、俺の代わりになるやろ。」

冗談めかして笑うのに、指先は私が持ってるイルカをそっと撫でている。

『……可愛くない。』

「はは、可愛いわ。お前が持つと全部。」

私が顔を赤くしたまま棚に戻そうとすると、啓悟がさっと奪い取ってレジに向かう。

『ちょ、啓悟!?』

「ほら、他にも欲しいの選べ。」

無防備に笑う横顔に、小さく溜息をつく。
でも心の奥はずっと、海の青色をまだ映しているみたいに熱かった。

お揃いのキーホルダーも、イルカのマグカップも――
この日だけの、秘密みたいに袋に詰め込んだ。

『……ありがとう。』

「後でちゃんと使えよ?」

店を出て、まだ温かい袋を抱えたまま、
啓悟は私の頭をぽんと撫でて笑った。

『……うん。』

イルカのぬいぐるみの柔らかさを指先に感じながら、
少しだけ遠い帰り道の空を見上げた。

もうすぐこの楽しい一日も終わる。
でも――まだ、終わらせたくなかった。
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