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【ヒロアカ】re:Hero

第14章 仮免の向こう側【R18】


窓際の席に朝の日差しが差し込んで、カップの湯気がゆらゆらと揺れてる。
啓悟は向かいの席で、頬杖をついてじっと私を見ていた。

『……なに?』

パンケーキにナイフを入れようとした手を止めると、啓悟は小さく笑った。

「別に?可愛いなー思って。」

『……ずるい』

思わず呟くと、啓悟は口元に指を当てて、声を潜めて笑った。

「ずるいって何が?俺、何も言ってないけど。」

『言ってる。顔がずるい。』

「お、それ褒めた?」

からかう声に顔が熱くなる。啓悟はちょっと身を乗り出して、私の前髪を指先でそっと避けた。

「……短いのもいいじゃん。全部似合うって、ほんと反則。」

髪を触る指がくすぐったい。
啓悟の視線がまっすぐすぎて、胸の奥がじんわりと熱くなる。

『……まだ、付き合ってないのに。』

ぽつりと漏れた声に、啓悟は少し目を細めて笑った。

「うん。まだ、な。」

軽くそう言って、テーブル越しに私の指を包む。
昨夜、右手にそっとはめられた指輪の冷たさが、啓悟の手の熱でじわりと溶けていく。

「でも、ちゃんと俺だけのだろ?」

掠れる声でそう言って、また笑う。
ずるい――ほんと、ずるい。

『……ずるい。』

思わずもう一度呟くと、啓悟はカップを片手に肩をすくめた。

「ずるかろ?でもしゃーないやん。」

そのタイミングで、近くの席の地元の人が小さく声をかけてくる。

「あ、ホークスやん!サインよかですか?」

啓悟は一瞬だけ私から手を放して、爽やかに振り返った。

「おお、よかですよー。ここでよか?」

さっきまで私にだけ向けてた甘い声が、ふっと切り替わる。
博多弁混じりの柔らかい声で、さらっとペンを受け取って笑う啓悟。

その横顔を見ているだけで、胸の奥がまた熱くなった。

こんなふうに笑ってるのに――
誰にも渡さないって、ちゃんと知ってる。
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