第14章 仮免の向こう側【R18】
窓のカーテン越しに薄い朝日が落ちて、まだ寝ぼけてる頭をくすぐる。
隣にいる啓悟も、同じタイミングで目を開けて、小さく笑った。
「……おはよ。」
低くて掠れた声が、胸の奥をくすぐる。
『……おはよう、啓悟。』
お互いに、まだ腕の中でぬくもりを感じてるのに
言葉があるだけで、また少しだけ幸せになる。
啓悟が髪に唇を落としながら、寝返りみたいに私を抱え込む。
「……結局、昨日はどこも行かないで終わっちゃったな。」
『……うん。結局……ずっと、部屋の中だった。』
声に出した途端、昨日の熱が思い出されて、頬がじわりと赤くなる。
啓悟は喉を震わせて笑いながら、目を細めた。
「……今日はちゃんと外、連れ出すから。」
私が笑って頷くと、啓悟の瞳が一瞬だけ真剣に揺れた。
「……でもさ。」
啓悟が私の髪を指先で梳かせながら、ふと目を伏せる。
「このままだとさすがに……誰が見ても俺が問題児だろ?」
冗談みたいに笑ってるけど、その奥に隠した優しさがわかる。
私は小さく笑って、啓悟の胸元を人差し指で突いた。
『……じゃあ、変えちゃおうかな。髪と……目の色だけ。』
「……へえ。」
啓悟が楽しそうに目を細めて、唇の端をあげた。
「ショートとかにすんの?」
『……うん、せっかくだし。啓悟と並んでも、
“ただの女の子”に見えるくらいにはしたいし。』
そう言った途端、啓悟の手が私の後頭部を優しく撫でた。
「……なんでも似合うから困るんだよね、想花は。」
名前を呼ばれただけで、また胸の奥が甘く疼いた。
「……早く着替えて、朝ごはん食べて……今日は、ちゃんと“デート”しよう。」
啓悟が小さく囁いて、額をコツンと合わせてくる。
窓の向こうの朝日が、やっとふたりの部屋を照らし始めていた。