第14章 仮免の向こう側【R18】
ホークスside
──ああ、もう無理だ。
笑う余裕も、はぐらかす言葉も、どこにも残ってない。
初めてこの子を見た時から、
「危ないな」ってずっと思ってた。
他の誰よりも危なっかしくて、綺麗で、
手を伸ばしたら、全部奪いたくなるって。
プロとして線引きしなきゃいけない立場で、
ヒーローとして守るだけでいなきゃいけない立場で。
インターンのあの日も、何度も距離を詰めたくなっては、
咽せるほど我慢してた。
触れた唇が熱くて、
離した後、何度も自分の舌で思い出してた。
あの時みたいに、余裕ぶって笑ってみせたくても――
今はもう、そんなものは跡形もない。
だって、今こうして腕の中にいるこの子が、
あの夜の何倍も、何倍も欲しくなる顔して、
俺の名前を呼ぶから。
『……啓悟……』
かすれた声で呼ばれるたび、
理性の奥がボロボロと崩れていくのがわかる。
「……言わなくていい。」
わかってる。
言葉にさせたら、きっと俺の何かが戻れなくなる。
好きだって言われたら、俺はもう二度と離せない。
離すわけないってわかってるけど、
そんな自分をまだ笑ってごまかせるうちに、
言わせたくない。
代わりに全部奪う。
声も、体も、熱も、心も。
ぜんぶ俺だけのにして、
もう二度とどこにもやれないように。
「……ほら、声……隠すなって。」
震える身体に口を落とすたび、
自分がどれだけこの子に飢えてたのか思い知る。
可愛い。
可愛すぎて、苛つくくらいに可愛い。
誰のものにもさせない。
俺がこの手で全部覚えさせる。
──もう、プロもヒーローも関係ない。
ただ、欲しいものを欲しいだけ欲しがる男になってる。
だから、今夜は言わせない。
俺の手の中で泣きながら、何度も名前を呼べばいい。
何度だって、俺のものだって思わせる。
笑っていられるうちに――
線引きなんて、もう二度と戻らなくていい。