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【ヒロアカ】re:Hero

第14章 仮免の向こう側【R18】


会場内に、二次試験の合格者百名が集められた頃。
災害救助訓練エリアに足を踏み入れると、遠くで立ちのぼる煙と、ひび割れたビルの残骸が視界に広がった。

人工の瓦礫の隙間から、助けを求めるかすかな声があちこちで聞こえる。
胸の奥が熱くなる。誰かの「助けて」が、私の心を真っすぐに突き動かした。

『……よし、行こう。』

小さく息を吐いて、崩れかけた壁にそっと手を置いた。
冷たいコンクリートの奥から伝わってくる微かな鼓動の気配――
光と地の個性を合わせて、崩落した梁の下にそっと地面から支えを這わせていく。

『……奥に二人……左側の子、たぶん小さいです……!』

「え!?マジで……!?」

近くで固まっていた他校の男子が、私の手元を見て息をのんだ。
私の掌の下で、地面が静かに膨らみ、瓦礫をそっと持ち上げる。

『危ないから後ろ下がっててください!崩さないようにしますから!』

「わ、わかった……!」

小さな子ども役のスタッフのすすり泣きが聞こえた瞬間、私はしゃがみ込んで目線を合わせた。

『大丈夫……もう怖くないよ。すぐに外に出よう?』

泣きじゃくる小さな手をしっかり握って引き寄せると、周りの受験生が息を飲む気配が背中越しに伝わった。

「星野さんって、戦うだけじゃなく……救助も……!」

「さっき一人で何人倒したって……?」

「嘘だろ……こんなことまで……」

誰かの小さな声が、埃の中で混じり合って響いた。
でも私はそれを聞き流す。今は目の前の人を助けるだけ。

瓦礫の奥にまだ気配を感じて、振り返った。

『この下に、もう一人います! 通路の奥から入れるはず……!お願いします!』

「お、おうっ!」

他校の男子が慌てて走り出すのを見届けると、私は子ども役のスタッフをそっと抱えて、明るい場所へ運んだ。

光に照らされた彼の額の血糊が、汗に混じって落ちていくのを見て、小さく笑った。

『大丈夫……もう大丈夫だから……』

震える小さな背を優しく撫でながら、遠くに聞こえる誰かの「助けて」に視線を向ける。

風が私の髪をなでるたびに、胸の奥が少しずつ熱を帯びていく。
これが、私にしかできないことだから。
一人でも多く……必ず、助けるんだ。
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