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【ヒロアカ】re:Hero

第14章 仮免の向こう側【R18】


通過者待機室の中は、まだ人気がなくて、
私の靴音だけがぽつんと響いていた。

遠くで試験官の声が何度もマイクで流れてくるのをぼんやり聞いている。

『……みんな……ちゃんと来るよね。』

小さく漏れた声が、空気に吸い込まれた瞬間。

「おーい!君だよな!
さっき一人で大暴れしてた雄英の!」

突然の大きな声に顔を上げると、
ずんぐりしたガタイの良い黒髪坊主の男子が、満面の笑みで手を振っていた。
制服の胸元には 「士傑」 の文字。

「俺、士傑高校一年の夜嵐イナサ!
いやぁ〜すっげぇもん見せてもらった!
あの突風みたいなの、一人で全部やったんだろ!?」

『……ありがと』

勢いに気おされて、思わず声が小さくなる。

「なんだよもっと胸張れって!
士傑だって負けてらんねーよ!」

夜嵐が満面の笑みで大声を響かせたとき、
落ち着いた声がその横から割り込んだ。

「……やっぱりここにいたんだ。
さっきはどうも。」

夜嵐の後ろから、服の袖を揺らしながら黒髪の青年が近づいてくる。

『……真堂くん。』

「さっきぶりだね、想花ちゃん。
さすがだな。試験会場出たら、みんな君の話題ばっかだったよ。」

真堂くんが肩を揺らして笑うと、夜嵐くんが怪訝そうに真堂を見る。

「ん?兄さん誰だ?」

「傑物学園二年、真堂揺。
君が士傑の夜嵐イナサか。」

「あー!マジか!初めてっす!
推薦映像で見てました、真堂先輩!」

「はは、それは光栄だな。」

がっしりとした夜嵐くんの手と、真堂くんの手がしっかり握手される。

二人の握手を見ていたら、少しだけ緊張がほどける。

「いやしかし雄英も大したもん捕まえたな。
こんなの自慢の後輩だろ?」

真堂くんが私を指で差しながら、くすりと笑う。

「ほんとっすよ!」
と夜嵐が声を弾ませる。

「てかさ、もし良かったらさ!
士傑にも顔出しに来いよ!
風の合わせ技、一緒にやりてぇし!」

『えっ……そ、それは……』

真堂が私の肩を軽く叩いて、夜嵐に目をやる。

「まぁまぁ、まずは仮免通ってからだ。
お互い――また会場で。」

夜嵐が満面の笑顔で、大きな手をぶんぶん振った。

「だな!あんたとまたやれるの楽しみだぜ!星野!」

ドアの外からは、他校の生徒たちの声が少しずつ近づいてくる。

胸の奥で、少しだけ小さく熱が灯った。
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