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【ヒロアカ】re:Hero

第14章 仮免の向こう側【R18】


地面に降り立った瞬間、弾けた砂埃がふわりと視界を霞ませた。
指先に残る熱と風の感触が、まだ心臓をドクドク鳴らせてる。

空に設置されたスピーカーから、試験官の声が割れたように響いた。

「……脱落者、一斉に138名……? 一人で……?!」

どよめきが一気に会場を覆う。
息を切らして座り込む他校の受験生たちの視線が、一斉に私に集まった。

「は!? 嘘だろ、まだ開始10分も経ってねぇぞ……」

「一瞬で全方向だぞ……何やったらあんな……」

「化け物だ、ありゃ……」

誰かの呆然とした声が風に運ばれて、耳に刺さる。
でももう、胸の奥は変に静かで、
割れたターゲットの欠片が足元に転がる音だけがやけに鮮明だった。

髪をかき上げて、大きく息を吐く。
吐き出す息が熱くて、ちょっと笑えた。

『……これで……終わり。』

肩越しに空を見上げる。
曇り空の向こうに、ひとすじの青が滲んでいる。

(……仮免なんて、私にとっては通過点だもん……。)

口元がふっと緩む。
遠くから轟音が響いてくる。あれは――勝己の爆風だ。
冷たい空気の隙間を切り裂くような凍気は、焦凍のもの。

『……ちゃんと来てよ、二人とも……置いてっちゃうよ……』

小さく息を吐いて目を閉じた瞬間、
再び試験官の声が会場を切り裂いた。

「一次試験、通過者発表――
雄英高校、星野 想花、通過を確認!
現在、残り受験者、残り……!」

声が追いかけてくる。
だけど耳に届くのは、遠くのざわめきと、風に乗った誰かの溜め息ばかりだった。

『……よし。』

そっと目を開けると、
広い試験会場の騒めきが、ただの雑音に変わって、
心の奥に小さく灯った熱だけが確かに燃えていた。
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