第5章 交わる唇、揺れる想い
「お待たせしました〜。激辛チリチーズパスタとスパイシーポテトです!」
湯気がふわっと立ち上る皿がテーブルに置かれると、男子たちの手がピタリと止まった。
「わっ、においだけでむせそう!?」
「星野、激辛チョイスとかギャップある〜」
「ちょっとカッコよくない?」
『えへへ、辛いの好きなんだ』
フォークでパスタをくるりと巻いて、ひと口。
『うん、ちゃんと辛い!』
その時、黙っていた爆豪が腕を組んだまま口を開いた。
「……お前、それ味わって食ってんのか?」
『え?』
「辛ぇもんは食い方次第で旨くなる。舌の使い方、ちゃんとしろ」
「爆豪の料理理論キター!」
「なんか色気ある言い方じゃね?」
みんなが盛り上がる中、私はスッとパスタを爆豪の前にスライドさせた。
『食べてみる?自分で味わえてるか自信ないし』
「ったく……」
ぶつぶつ言いながらも、爆豪はフォークをひと巻きして静かに口に運ぶ。
その所作が妙に丁寧で、思わず見とれてしまう。
「……悪くねぇ。ちゃんと旨味が残ってる」
「爆豪が褒めた!?奇跡!?」
「星野、特別扱いされてない?」
「青春感すごい!」
『そ、そんなつもりじゃ……!』
切島がにこにこしながら言った。
「爆豪が人の勧め受けるなんてレアだぜ?俺のは却下されたし!」
「オレは無視だった……」と瀬呂。
上鳴はニヤニヤしながら爆豪の肩を叩いて、
「星野のこと気に入ってる〜?」と茶化す。
「……死ね」
爆豪はいつもの調子で返し、みんなで笑い合った。
そんな空気の中、ふっと目を細める。
(こんなに笑えてる自分、なんだか不思議だな)
ほんのり辛くて、でもあたたかい夜だった。