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【ヒロアカ】re:Hero

第5章 交わる唇、揺れる想い


ファミレスの扉が開いて、わいわいと喋るクラスメイトたちが次々に外へ出てくる。

夜風が気持ちよくて、ふっと空を見上げると、どこまでも広がる群青の空。
街灯がぽつぽつと道を照らしていた。

『今日は、たのしかったね』

隣にいたお茶子ちゃんと三奈ちゃんに微笑むと、ふたりは元気よく手を振ってくれた。

「また明日ねーっ!」
「想花ちゃん、LINEするね!」

そのまま、それぞれの方向に散っていくクラスメイトたち。
私は一人、自分の帰る道を歩き出そうとして――

「星野」

名前を呼ばれて振り向くと、少し後ろに立っていたのは轟くんだった。

『あ……轟くんも、こっちだったんだ』

「ああ、……送ってくよ」

それだけ言って、彼は自然と私の隣に並ぶ。
無言だけど、気まずいとかじゃなくて……なんだか落ち着く。

(なんだろ、この空気)

歩調を合わせてくれるのがうれしくて、私はそっと笑みを浮かべた。

住宅街に入ると、道は静かになって、私たちの足音だけが響く。

やがて、見慣れた自分の家の前に辿り着いた。

『ここだよ。わざわざ送ってくれてありが――』

「……なぁ、星野」

不意に遮られた声に、私は驚いて顔を上げる。

「少し……話せるか?」

その目はまっすぐで、けれどどこか迷いを含んでいた。
いつも冷静で落ち着いている彼が、こんな風に躊躇いがちに言葉を選ぶなんて。

(……なに、話って)

心臓がトクンと鳴った。

『……うん。大丈夫。少しくらいなら』

夜風がふたりの間を通り抜けていく。
さっきまで楽しかった余韻と、今から始まる“なにか”に、胸がふわりとざわついていた。
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