第5章 交わる唇、揺れる想い
「くじで席決めしまーす!」
誰かの声に、教室がいっせいにわっと沸いた。
私も流れにのって、小さな紙を一枚引く。
手のひらでそっと開いてみると――
《Bテーブル》
指定された席に向かうとそこに居たのは、男子メンバー。
『……えっ』
思わず紙を二度見した。いや、見間違いじゃない。
(ま、まさかの男子テーブル……!?)
「よっしゃー!オレ、切島と一緒か!」
「星野もいるじゃーん!おー、なんかレアメンでワクワクする!」
上鳴くんのテンションは相変わらず高くて、切島くんも楽しそうに頷いてる。
瀬呂くんはちらっと私を見て、にやっと笑った。
そして、すでに席についていた爆豪くんはというと……
「……チッ、妙なクジ運してやがるな」
不満げに眉をひくつかせながらも、ちゃんと座ってるあたりがちょっと面白い。
『う、運命ってやつかもね、かっちゃん♪』
わざと明るく言ってみると、案の定――
「呼ぶなッ!!」
すかさず爆発気味のツッコミが返ってきた。うん、今日も平常運転。
私は愛想笑いでその場をごまかしながら、指定されたテーブルへ。
つい視線を向けた女子テーブルでは、三奈ちゃんとお茶子ちゃんがめちゃくちゃ「うわ〜」って顔してる。
私が目を合わせると、ふたりして口パクで「がんばれ……!!」
『……まじか』って思わず肩をすくめちゃった。
「でさ、星野って何頼むんだ?女子っぽいやつ?」
「いや、甘いやつ食ってるとこ想像できんだよなー」
「ケーキ?パフェ?それともミニパフェで『ちょっとだけ♪』とか?」
『ちょっとだけ♪って何よそれ!そんなキャラじゃないし!』
ひきつり笑いで返すと、「まじかよ!」「食べっぷりいいの?!」って逆にウケてた。
……なんかもう、思ったより馴染んでる自分がいて、笑うしかない。
と、そのとき。ふいに爆豪くんが、真っ直ぐ私を見た。
「……強ぇやつは、ちゃんと食うんだよ」
言葉も目も、少しだけ真剣で。
私は思わず、『……うん』とだけ、静かに頷いた。
ふと視線を落としたテーブルのメニュー。
そこには美味しそうな写真と、にぎやかな文字が並んでいた。
(……こんなふうに笑ってる。あの頃の私、想像できたかな)
なんて、少しだけ過去の自分を思い出しながら――
私はメニューを、そっとめくった。