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【ヒロアカ】re:Hero

第14章 仮免の向こう側【R18】


想花side

夜の屋根の上。
冷たい風なんて、もう何も感じなくて、啓悟の吐息と体温だけが全部だった。

何度も触れた唇が、離れたくないみたいに絡まって、
胸の奥が熱くて苦しくて、それでも嬉しくて――。

啓悟の手が私の背中をぎゅっと抱きしめたとき、
小さく息を吸った。

ふと、絡めた指先が少し冷たくて、現実に戻る。
ここは学校の屋根の上。
啓悟の仕事も、明日の仮免も――全部、頭をかすめる。

でも、それすら愛しくて。

私はそっと啓悟の胸に額を預けたまま、唇を近づける。

『……啓悟。』

名前を呼ぶと、啓悟が小さく「ん…」って返してくれる。
その声がくすぐったくて、笑いそうになる。

私は彼の胸に手を置き、そっと目を上げた。

『……そろそろ、戻ろっか。』

言った瞬間、啓悟の瞳がわずかに揺れた。

『……だって、もう充分…満足したから。』

わざと笑ってみせたら、啓悟の腕が私を逃さないように強くなる。

「……は?何言ってんの、想花。」

低くて掠れた声が喉を震わせて、
それだけで私の背中にまわる腕に力が入る。

『……だって、啓悟忙しいでしょ?』

そう言いかけた瞬間、啓悟が小さく笑った。
困ったみたいに息を吐いても、瞳は全然笑ってない。

「……俺に満足したとか、簡単に言わないでください。」

言葉の端に普段のふざけた調子が滲むのに、熱だけは逃げてない。

『……啓悟……?』

啓悟の指が頬に触れ、顎にかかる。
そっと上を向かされて、目が合った。

「逃げるとか、許すわけないじゃん。」

耳元で落ちた声が、優しいのに深くて低い。

「……俺の欲しいって言ったの、想花でしょう?」

ドクン、と胸が跳ねて、息が詰まる。

『……だって……』

言い訳を探す唇に、啓悟の指先がそっと触れて塞ぐ。

「いいから……もうちょっとだけ、俺に付き合って。」

囁くみたいに、でも敬語混じりの声が胸の奥を溶かす。

「……お願いだから。」

普段は絶対言わない「お願い」が、夜風より熱く耳をくすぐった。

次の瞬間、啓悟の唇が私の唇を、もう一度奪った。
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