第14章 仮免の向こう側【R18】
唇が離れるたびに、小さく息が混ざる。
夜風が頬を撫でるけど、熱が逃げる気なんてしない。
想花の髪が俺の顔に触れてくすぐったい。
見上げる形で、あいつの顔が近くて――目が合った瞬間、また心臓が跳ねた。
「……想花、おま……」
声がかすれて、最後まで言えなかった。
言葉より先に、あいつの小さな手が俺の胸をぎゅっと掴んでくる。
(……ああ、もう、ダメだって。)
頭の奥で理性が必死に警鐘鳴らしてんのに、
その声が想花の吐息ひとつで簡単にかき消されていく。
何がいけないって、
前にあんなに優しく抱いたくせに、
自分で甘やかしたくせに、
今さら我慢なんてできるわけないんだよ。
「……っ、ほんとに、やめろって……想花……」
声はかすれて、まるで説得力がない。
むしろ、想花の指を掴んで止めようとした手は、
逆に肩を抱いて引き寄せてる。
『……啓悟……』
甘えるみたいに名前を呼ばれて、腹の底がひっくり返るみたいに熱くなる。
唇がまた触れて、今度は俺の方から応えてしまう。
(ここで止めるとか無理だろ……。)
ほんの数秒前まで、イレイザーにバレたらってビビってたくせに、
今はどうでもいい。
冷たい屋根の上で、繋がった温度だけが全部だ。
あとちょっと、あと少しだけ――。
唇を離す気なんて、もうどこにもない。