第14章 仮免の向こう側【R18】
夜の屋根の上。
冷たい風がそっと羽根を揺らし、星空が静かに私たちを見守っている。
啓悟の指先が、ゆっくりと私の頬に触れた。
そのあたたかさに、胸の奥がぎゅっと締めつけられて、自然と彼の瞳を見つめてしまう。
「…なに?そんなにじっと見つめて。
もっとしてほしいのか?」
彼の低くて優しい声が、夜の静寂の中で心地よく響いた。
恥ずかしくて顔が熱くなるけれど、素直に小さく頷いた。
『うん……口にも……して?』
その言葉を聞いた瞬間、啓悟の表情が一瞬固まったのを見逃さなかった。
彼の瞳は戸惑いと驚きで揺れて、呼吸が少し早くなるのがわかる。
『……してくれないの?』
私は、ためらいもなく、じわりと彼に近づきながら問いかける。
啓悟は一瞬視線を逸らし、声を潜めて言った。
「いや……ここは、学校の敷地内だから……」
でも、冷たい夜風が吹き抜けても、私は彼の温もりがどうしても欲しかった。
だから迷わず彼に近づき、そっと啓悟を屋根の上に押し倒した。
その瞬間、彼は完全にされるがまま、体が固まって動けなくなっている。
「……想花……ちょっと、ストッ……」
困惑と驚きが混じった声が漏れたけど、私はそんな彼の唇に、自分の唇をそっと重ねた。
啓悟の体の硬さが伝わってくる。
でも、私の声は小さく震えながらも、真っ直ぐに届くように呟いた。
『…会いたかった……すごく』
その言葉を吐き出すように言って、もう一度唇を重ねる。
冷たい空気の中で交わる温もりが、まるで世界を溶かしていくみたいにゆっくりと広がって、時間がふっと止まったようだった。
啓悟の驚きが、じわじわと溶けていくのを感じながら、私はそっと目を閉じた。