第14章 仮免の向こう側【R18】
玄関の前で一度だけ深呼吸する。
ドアノブにかけた手が、小さく震えた。
『……はぁ……』
カチャリ、とドアを開けた瞬間。
夜の空気の向こうに、見慣れた色がふわりと立っていた。
「よ、想花。」
夜風と一緒にくすぐったい声が届く。
コートの襟を片手で摘んだまま、
無造作に立ってるその人の背中には、
見慣れた赤い羽がちらりと揺れた。
『……ホークス……っ!』
名前を呼んだ瞬間、胸の奥がぶわっと熱くなる。
気づいたら玄関の段差を飛び越えていた。
「わっ、っと!」
ホークスの声が笑いに滲むより早く、
私は彼の胸元に飛び込んでた。
ふわっと羽の匂いと夜の匂いが混ざって、
肩に腕を回された瞬間、息が詰まるほど安心する。
「はは、元気そうじゃん。仮免前だってのに余裕だなぁ?」
耳元でくすぐる声が、
いつもの冗談混じりの軽さで、
でも奥がちょっとだけ甘い。
『……来てくれるなんて思わなかった……!』
「そりゃ来るでしょ、想花が頑張ってんだからさ。」
腕の中で、背中をトンと軽く叩かれる。
まるで羽で撫でられてるみたいに優しい。
「ほらほら、先生に怒られんぞ?こんなとこで抱きついてるとさ。」
そう言いながらも、ホークスは私を離さない。
むしろ肩口に顔を寄せて、
小さく笑う息が首筋に触れる。
『……ん……だって、会いたかったんだもん……』
思わず零れた声に、ホークスの肩が小さく揺れた。
「……かわいーこと言うじゃん。」
耳元でそう囁いて、
くしゃっと髪を撫でてくる指先があったかい。
『……明日、頑張るから……ちゃんと……』
「知ってるって。だから来たんだろ。」
離したくないみたいに、
彼の羽が私の腰のあたりにふわっと巻きついて、
夜の風がほんのり甘くなる。