第14章 仮免の向こう側【R18】
切島くんと並んで走りながら、少しだけ速くなる自分の心臓の音を感じてた。
グラウンドの真ん中では、相澤先生が腕を組んで立っていて、
近くにはエクトプラズマ先生の分身が何体か並んでた。
私の足音に気づいて、相澤先生がちらりとこっちを見た。
「星野。」
その声だけで、背筋がピンと伸びる。
『はい!』
「お前の合わせ技、最後に本番形式で試してみろ。
動きは自分のタイミングでいい。後は俺が見る。」
相澤先生の声はいつも通り無駄がないのに、今日は少しだけ背中を押してくれてる気がした。
『……はい!』
グラウンドの端では、切島くんが「がんばれよー!」って拳を突き上げてて、
お茶子ちゃんや三奈ちゃんも小さく手を振ってくれてた。
『……行きます!』
足元の土を踏んだ瞬間、胸の奥が熱くなる。
火と風が、背骨の奥で絡むみたいに脈打った。
目の前には、エクトプラズマ先生の分身。
無言で踏み込んでくる一瞬の隙を、呼吸を止めて見つめた。
『……今!』
爪先で蹴った空気に、熱が混ざる。
火を纏わせた風が、腕の軌道に沿って一気に走る。
分身が踏み込んでくる。
『……はっ!』
振り抜いた瞬間、熱が風をまとって軌道を裂いた。
衝撃が空気を震わせて、分身の肩がわずかに後ろへ跳ねる。
『……もう一発!』
すぐに息を吸って、胸の奥で熱を巻き上げる。
吐き出すと同時に、もう一度風が火を運んで、拳の先で弾けた。
土が弾けて、分身が後退する。
拳の奥がじんわりと熱い。
でもその熱は、不安じゃなくて自分の心臓と同じリズムで鳴ってた。
『……繋がった……!』
声は出ないのに、胸の奥で確かに聞こえた。