第14章 仮免の向こう側【R18】
あっという間に、二週間が過ぎた。
思えば、戻ってきたばかりの頃は、グラウンドの空気さえちょっとだけ冷たく感じてたのに。
『……ふぅ。』
深呼吸すると、土と風の匂いが鼻に入って、胸の奥がすっと落ち着いた。
今日は仮免前の、最後の必殺技訓練。
教室で配られたスケジュール表の“最終調整”って言葉が、ずっと頭の中で光ってる。
誰かの笑い声が遠くで弾けて、振り返ると上鳴くんと切島くんが肩をぶつけ合って騒いでた。
その向こうではお茶子ちゃんが三奈ちゃんと話してて、楽しそうに手を叩いてる。
『……ほんと、みんな強くなったなぁ。』
この二週間で、私もいくつも変わった。
一人で同じ技ばかり繰り返してた私が、尾白くんの頼みで一緒に汗をかいて、
気づけばいろんな子に「相手して」って声をかけられるようになってた。
ずっと苦手だった合わせ技も、何回も何回も失敗して、ようやく昨日つながった。
完璧じゃないけど、前よりずっと自分のことを「できる」って思える。
『……よし。』
遠くで、爆破音が小さく弾けた。
音の方を向くと、勝己がいつもの険しい顔でグローブを外してて、
その隣には焦凍が静かに氷を割るみたいに手を動かしてた。
あの二人と同じ場所で、同じ空気を吸ってる。
それだけで、胸の奥が少しだけ温かくなる。
『……絶対、追いつくから。』
誰に言うでもなく、小さくつぶやいて、拳を握る。
冷たい風が頬をなでた。
「星野ーっ!」
呼ばれて振り返ると、切島くんが大きく手を振りながら走ってきた。
「先生が呼んでるぞー!ラストの仕上げだってさ!お前の番だー!」
『うん!今行く!』
笑い声に背中を押されるみたいに、私は土を蹴った。
グラウンドを駆ける足音が、ちょっとだけ頼もしく響いてた。