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【ヒロアカ】re:Hero

第14章 仮免の向こう側【R18】


「来い、星野!」

尾白くんが構えた瞬間、私は少しだけ息を吸い込んだ。
土の匂いと、誰かの声が遠くに聞こえる。

『……いくよ!』

先に動いたのは私だった。
一歩踏み込んだだけで、尾白くんの尻尾が反射的に振れる。
けど、その動きを読むのはもう何度目だろう。

するりと間合いを抜けて、尾白くんの肩口に指先が届く。

「うわっ、速っ…!」

尾白くんが苦笑いしながらすぐに体勢を立て直す。
でも、その間に私はもう一度踏み込む。

『ほら、次!』

尻尾を翻して突いてくるのを、軽くいなすと同時に背後を取る。
自分でもちょっと驚くくらい、体が勝手に動いてた。

「マジで…星野、速すぎだって!」

『尾白くんの反応も十分速いよ。ほら、次!』

何度かやり取りを繰り返すうちに、気づけば周りに集まってきたクラスメイトの声が耳に届く。

「おい見たか?星野の動き…」
「えぐ…あれ尾白が全然追いつけてなくね?」

息を切らしながらも、尾白くんが笑って言う。
「ほんっと、いい訓練になるわ!もう一回!」

『いいよ!遠慮しなくていいからね!』

ほんの一瞬、視線の端に焦凍が立っているのが見えた。
勝己も腕を組んで、何か言いたげにこっちを睨んでる。

でも、今はどうでもいい。

『……尾白くん、次は全力でくるよ?』

「おう!遠慮すんなよ!」

大きく踏み込んで、私は地面を蹴った。
土埃が舞って、誰かの歓声が遠くで上がった。

本気でぶつかれる相手がいるのって、
こんなに楽しいんだ。
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