第14章 仮免の向こう側【R18】
想花side
チャイムの音がまだ耳に残ってるのに、教室の空気はもう昼休みモードに切り替わってた。
机の上のノートをまとめながら、小さく息を吐く。
仮免許試験の訓練のことを考えると、ちょっとだけ胸がざわつくけど…お腹はそんなの関係ないみたい。
鳴りそうで恥ずかしいから、早く食堂行こ。
廊下を抜けて、階段を下りると、揚げ物の匂いがふわっと鼻をくすぐった。
思わず笑ってしまう。
『……お腹空いたなぁ』
食堂の扉を開けた瞬間、聞き慣れた声が飛んできた。
「おいおいおいおい!まさかあれ想花ちゃんじゃないの!」
物間くんの声、相変わらず大きい。
『えっ…?』
「うわっ!想花ちゃんじゃん!」
回原くんが真っ先に立ち上がって、手をぶんぶん振ってくる。
「想花!久しぶりだなー!」
鉄哲くんの声がやたら元気に響く。
『え、ちょっ…みんな…!』
驚く間もなく、物間くんが両手を広げて突っ込んできた。
「全然顔見せないから心配したんだからなー!」
『わっ、ちょ、物間くんっ…!』
後ろから拳藤ちゃんが私の肩をガシッと掴む。
「ほら逃がさないから!今日は絶対一緒だからね!」
『ちょっと…みんな大げさ…!』
円場くんがにこにこしながら顔を覗き込んでくる。
「仮免の訓練どう?死んでない?」
泡瀬くんも笑って肩をポンと叩いた。
「怪我してない?元気そうで何より!」
『元気だし!ちゃんと生きてるし!』
なんかもう、嬉しさで変な笑い出そうだった。
後ろで鱗くんが小さく笑ってて、
「今日は一緒に飯食おうぜ、想花」ってぼそっと言ってくれたのが、なんか胸に沁みた。
「おい物間!いつまで抱きついてんだ、離れろ!」
鉄哲くんが物間くんを引っぺがしてくれて、やっと息ができた。
『……みんな、ありがと。会えて嬉しい』
自然に声が漏れて、胸の奥がふわっと軽くなる。
ここにちゃんと戻ってこれたんだって思えた。