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【ヒロアカ】re:Hero

第14章 仮免の向こう側【R18】


爆豪&轟side


夜風が熱気を連れてくる夏の夜。
寮の外れ、薄暗い校舎裏に、轟と爆豪が向かい合って立っていた。

「……お前も見てただろ、さっきの。」

先に口を開いたのは轟だった。
月明かりに白赤の髪が揺れる。
爆豪は鼻を鳴らして、ポケットに突っ込んだ手をぎゅっと握りしめた。

「見りゃわかんだろ、あんなの。」

想花の頬の赤さも、隠しきれない声の柔らかさも――
全部があいつだけのものじゃないって、二人には嫌でも分かった。

「ホークスか。」

低く吐き捨てるように轟が言うと、爆豪の眉間がぐっと寄る。

「……付き合っては、いねぇんだろ?」

問いかけのような、確認のような言葉に、轟はほんのわずかに目を細めた。

「……ああ。たぶん、な。」

重い沈黙が流れる。
二人とも、足元の小石を蹴るでもなく、ただ風に汗を冷まされていた。

「だからって、引く気はねぇ。」

爆豪が言葉を吐き出すみたいに低く笑う。
その目には、絶対に折れない灯が宿っている。

「お前にも、あいつは渡さねぇ。」

「同じだ。」

轟も静かに言葉を重ねた。
その声は氷みたいに冷たいのに、奥底で火花を散らしている。

「……あいつが笑って帰ってきたのは、俺たちがあいつを連れ戻したからだ。」

「だから何だ。戻しただけじゃ足りねぇ。」

爆豪がじりっと近づく。
お互いに触れもしない距離で火花が散った。

「どっちがあいつに似合うか、証明してやる。」

「望むところだ。」

一瞬だけ視線をぶつけ合って、
その奥に宿るのは同じ“執着”だ。

――あいつがまだ、あの羽に全部奪われたわけじゃない。

夜風が熱く吹き抜けたその瞬間、
二人の中で、小さく決意が噛み合った。

まだ、終わってない。
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