第14章 仮免の向こう側【R18】
夕飯で賑わう食堂の中。
みんなの笑い声が飛び交っているのに、
私はどこか落ち着かないまま、箸を持った手をじっと見つめていた。
ふと、耳郎ちゃんがじっと私を見てきて、
「ねぇねぇ、想花さ、最近なんか……すごく大人っぽくなったよね?」
と、突然の一言。
思わず顔が熱くなって、
『えっ……?そんなことないってば!』
と慌てて笑う。
でも三奈ちゃんがすぐににやっと笑って、
「わかるー!前よりずっと色っぽいっていうか……女って感じするもん!」
とからかうみたいに言う。
葉隠さんまで小さく「だよねぇ」と頷いて、
テーブルの女子たちの視線が一斉に私に集まった。
「なんかあったでしょ?秘密の恋とか~?」
耳郎ちゃんがニヤニヤして身を乗り出してくる。
『ち、違うから!本当に何もないってば!』
慌てて手を振るけど、みんなは「絶対何かある!」って笑いながら、
背中をぽんぽん叩いてくる。
その声と笑顔が、どうしようもなくあったかくて、
胸の奥がじわっと熱くなるのを感じた。
――あの夜、あの人が私の名前を呼んでくれたこと。
優しく触れて、すべてを受け止めてくれたこと。
誰にも言えない、小さな秘密。
でもそれが、今の私を支えてくれる。
誰にも話さなくていい。
だって、あの人の声で呼ばれた“私の名前”は、
誰にも渡せない、私だけの宝物だから。
からかわれてもいい。
何を言われたって平気だ。
この胸に、小さな灯りみたいに、
そっと閉じ込めておくんだ。
甘くて、切なくて、でも少しだけ強くなれる――
そんな秘密を抱えて、私は今日もみんなと笑っていられる。