第14章 仮免の向こう側【R18】
校庭の端、木陰の下で汗がすっと引いていく。
火と風を合わせた練習で、まだ指先にはじわりと熱が残ってた。
ペットボトルを握りながら、
向かいの緑谷くんがノートをめくる音が心地いい。
「星野さん、さっきの合わせ技だけど…
火が風に負けそうになってたかも。」
『あ…やっぱり分かる?』
思わず笑ってしまった。
自分でもまだ軌道が安定しなくて、炎が風に散ってしまう。
「でもさ、火の温度と風の向き、両方調整できるなら…
ホークスみたいに風の流れを操る感じで…
真似してみたら?」
――ホークス。
名前が出た瞬間、
心臓がドクンと跳ねたのが自分でも分かった。
『……ホークス、みたいに……?』
思わず問い返した声が少しだけ掠れる。
「うん、翼の角度とか、風を集める動きが参考になるかもって思って。」
隣で常闇くんも頷いてくれる。
「ホークスは風を“読む”のが上手い。
星野の翼も活かせば、もっと軌道が安定するはずだ。」
『……そっか……真似してみようかな。』
言葉にすると、また胸の奥が熱くなる。
昨日までの夜が、急に鮮やかに蘇る。
でも今は訓練中。
頬をぺちんと叩いて気を引き締める。
「それに星野の火は“光”に近いから軌道も読みづらい。
予測できない動きにしてみろ。」
常闇くんが静かに言ってくれて、
横で緑谷くんが「すごい…それなら相手のガードが間に合わないかも!」って笑う。
『2人とも、ありがとう…!』
火照った頬が、少しだけ吹いた風に冷やされる。
木の葉の隙間から差す日差しが、まるで小さな灯みたいで。
こうして一緒に考えてくれる仲間がいるから、
何度だってもっと強くなれる気がした。