第14章 仮免の向こう側【R18】
もう一度、息を吸った。
砂の匂いと、熱くなった空気が肺を満たす。
さっきより少しだけ、指先が迷わない。
炎の渦を思い浮かべたとき、さっきより輪郭がはっきりしてる気がした。
『……いける。』
掌に集めた光が、ふっと脈打つ。
それに呼応するみたいに、風が背中を押してくれる。
「おーし! もう一回だ!」
切島くんの声が遠くから飛んでくる。
「星野さん、焦らないで! 流れはできてる!」
緑谷くんがノートを持ったまま、真剣な顔で何かをぶつぶつ言ってるのが聞こえた。
遠くで勝己が「グズグズすんな、さっさと仕留めろ!」って叫んで、
焦凍は黙って、でも確かにこっちを見てる。
みんなの声が背中に重なって――
それが、私の力になる。
『……風、炎、光……全部……』
想うだけじゃ届かない。
でも想わなきゃ、始まらない。
この手の中で、何かが形になる。
まだ名前は無いけど――きっと、これが私だけの一撃になる。
「――いいぞ、その調子だ。」
背後から、エクトプラズム先生の低い声が落ちてきた。
顔を見なくてもわかる。
多分、ほんの少しだけ口元が緩んでる。
『……あと少し。あと少しで……!』
再び掌を突き出す。
熱と光が弾けて、風がそれを大きく包んだ。
ターゲットの向こうで、空気が歪む。
眩しい光が私の視界を埋めて――
一瞬だけ、確かに“届いた”って思えた。
『……これが……私の……』
息を吐く。
まだ名前の無いこの力が、
いつか“私だけの必殺技”になる。
誰もがそれを見つめてる。
その視線があたたかくて、少しだけくすぐったくて。
(――まだやれる。何度でも、何度でも。)
光に染まった空を見上げて、
私の中の小さな闘志が、またひとつ強くなった気がした。