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【ヒロアカ】re:Hero

第4章 優しさの証


相澤・オールマイトside

静まり返った会議室。

彼女が去ったあとの空間には、夕暮れの光が細く差し込んでいた。
机の上には、彼女が触れたカップのぬくもりがまだ、かすかに残っている。

しばらく沈黙が続いたのち――

「……“逃げられると思うなよ”」

オールマイトの低い声が、ぽつりと空気を揺らす。
その瞳はどこか遠くを見つめていた。

「……あの子の言った“声”に、聞き覚えがあるか?」

相澤が腕を組んだまま、静かに問いかける。
その目は鋭く、けれどどこか……少しだけ揺れていた。

オールマイトはゆっくりと立ち上がり、背後の窓の外に目をやった。
茜に染まる空を、重く噛みしめるように見つめながら、唇を開く。

「……まさかと思いたい。けれど……“似ていた”」

「“力を持つ子供”を狙い、その記憶にだけ“声”を残すやり方……」

沈黙。
それが何を意味するのか、互いにもう分かっていた。

相澤の目が、わずかに細められる。

「……オール・フォー・ワン、か」

オールマイトは何も答えなかった。

ただ、その手が、気づかぬうちにぎゅっと拳を握りしめていた。

「もし本当に奴の手が……あの子にまで伸びていたのだとしたら……」

「……これは、想像以上に深い“因縁”かもしれない」

オールマイトの声には、怒りとも悔しさともつかない、抑えた熱がにじんでいた。

 

「……だが」

相澤が言う。
低く、静かに、でも迷いのない声で。

「それでもあの子は、前に進んでる。“ヒーローになりたい”と、そう言った」

「なら、俺たちのやることはひとつだろう」

オールマイトはゆっくりと振り返り、目を細めて頷いた。

「……ああ。今度こそ、守らねばならない」

「彼女の“未来”を――」

 

光が差し込む会議室の奥で。
二人の教師は、それぞれの思いを胸に、静かに立ち尽くしていた。

誰にも気づかれぬまま、物語は、確かに動き始めていた。
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