第14章 仮免の向こう側【R18】
「お前の強みは、その“多彩さ”だ。」
エクトプラズム先生の言葉が、頭の奥でまだくり返し響いてる。
風の渦が足元を駆け抜けて、砂埃を巻き上げた。
遠くで勝己の爆発音が聞こえる。
切島くんの掛け声と、焦凍の氷が割れる音と――
全部が混ざって、訓練場の空気が熱を帯びていく。
私の前には、エクトプラズム先生の分身。
ただ倒すだけなら簡単。
でも、私がやりたいのは、それじゃない。
『……風と、炎……っ』
掌を前にかざす。
呼吸を一つ吐いて、想像する。
私の中にある、全部の“光”と“熱”と“風”を――一つに束ねる。
胸の奥がじりじり熱い。
まるで自分の心臓を火種にしてるみたいだ。
『――いけっ!』
放たれた瞬間、目の前の空気が一気に色を変える。
赤い炎が渦を巻いて、風がその輪郭を膨らませていく。
一瞬だけ、ターゲットの向こうに、赤い竜巻が立ち昇った。
「……っ、まだ足りない!」
崩れかけた炎の渦が、風に負けて散っていく。
焦げた匂いと、一瞬の静寂。
「星野! 惜しかったじゃねぇか!」
切島くんの声が飛んでくる。
少し離れた場所で、緑谷くんがノートを広げながら必死にメモしてる。
『……まだまだ、もっと強く……!』
私の強みは、多彩さ。
でもそれを束ねられないなら、意味なんてない。
私にしかできない必殺技を。
私にしか届かない場所に――この力を、届かせたい。
もう一度、足を踏み込む。
風が、砂埃をさらって、太陽の光に滲む。
『……成功させてやる。』
空気がまた熱くなる。
私の中の光と風と炎が、一つになって――
何度だって立ち上がる。