第14章 仮免の向こう側【R18】
朝の光が窓から差し込んで、教室の床を静かに照らしていた。
いつもと同じ景色のはずなのに、どこか少しだけ違って見えるのは、たぶん私の心のせいだ。
相澤先生が教卓の前に立つと、教室の空気がきゅっと引き締まる。
寝癖を隠すみたいに頬杖をついてた切島くんも、ノートを開いたまま緑谷くんも、みんなが一斉に顔を上げた。
「――これからの君たちの当面の目標は、“ヒーロー仮免許試験”だ。」
相澤先生の低い声が、心に真っ直ぐ突き刺さった。
少し前のあの夜のことが、頭をよぎる。
あの恐怖と、あの救いと、まだ癒えきらない胸の奥の痛み。
「ただ試験を受ければいいわけじゃない。
ヴィランに立ち向かうために、もっと強くなる必要がある。」
窓の外の青空が、いつもよりずっと遠くに感じた。
でも視線を落とすと、机の向こうにいるみんながいる。
私だけじゃない。みんなでここにいるんだ。
「そのために――必殺技を編み出せ。
今のままじゃ足りない。お前たち自身が進化しろ。」
相澤先生の声は厳しいけど、優しさがにじんでいるのがわかる。
あの人はいつだって、ちゃんと私たちを見ていてくれる。
私の個性で、何ができるんだろう。
あの夜、無力だった私にできること――今度こそ守れる力が欲しい。
ふと隣を見ると、爆豪くんが面倒くさそうに頬杖をつきながら、それでも目は真剣で。
轟くんは何かを考え込むみたいに手を組んでいた。
みんなもきっと同じだ。
怖くないわけじゃない。だけど前に進むって、決めている。
――私も、絶対に負けない。
胸の奥でそっと握りこぶしを作った。
教室の中の光が、私の決意をそっと照らしている気がした。