• テキストサイズ

【ヒロアカ】re:Hero

第13章 この手が届くうちに【R18】


緑谷、爆豪、轟、切島side

夜が明けても、胸の奥のざわつきは消えなかった。
轟も、爆豪も、緑谷も、切島も――
それぞれの表情に、眠れない夜の色が滲んでいる。

昨夜、やっとの思いで助け出した“あいつ”は、
自分の足でホークスの元へ歩いて行った。
「一人にさせて」
そう言われたとき、何も言い返せなかった。
何があったのか、本当は全部聞きたくて、
抱えている痛みを、せめて少しでも分けてほしくて――
でも、あの顔を見たら何もできなかった。

結局、自分たちには助けることしかできなかった。
癒すことも、背負うこともできなかった。
だからこそ、ホークスの「任せてくれ」という言葉に縋った。
本当は誰も、そう言い切れるほど割り切れてなんかいないのに。

「……寝れたかよ、てめぇら」

爆豪の低い声が、まだ冷たい朝の空気を切った。
無造作にポケットに突っ込んだ手が落ち着きなく揺れている。

「ぜ、全然……でも、顔はちゃんと見たいから……」

緑谷は無理に笑って、携帯を握りしめていた。
何度も通知を確認しては、ため息をついている。

切島は黙って両手をポケットに突っ込んだまま、
ホークス事務所の重厚な扉を睨むように見つめていた。

「……ホークスが何したってわけじゃねぇのにさ……」

ぼそりと呟いた切島の声に、轟が小さく応える。

「あいつが……あいつが“自分で選んだ”ってことなんだろ」

それがわかっているからこそ、苦しかった。
自分たちは助けたつもりで、救えたなんて思い上がっていた。
でも本当に必要としていたのは――
このドアの奥にいる、あの人だったんだ。

それでもいい。
それでも、離れたくないと思ってしまう自分が情けなくて、
だから余計に、誰も言葉を足せなくなる。

ただ立ち尽くして、少し肌寒い朝の風に吹かれながら、
ドアが開くのを――
あの声が聞こえてくるのを、待っていた。

/ 664ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp