第13章 この手が届くうちに【R18】
想花side
ほんのりとした光が、カーテンの隙間から差し込んでいた。
柔らかいシーツの感触と、あたたかい体温。
目を開けなくても分かる。今、私は――彼の腕の中にいる。
『……うそ、でしょ……?』
かすれた声が、唇から漏れる。
思い出すだけで顔が焼けそうだった。
昨夜のこと。
彼の手のひら。声。温もり。名前を呼ばれて、泣いて――
その全部を、私は受け入れた。
(ほんとに、しちゃったんだ……)
しかも、あれが初めてで……!
思い出すたびに胸がぎゅーってなって、どうしようもなく恥ずかしくて。
「……おはよ」
低くて甘い声が、耳元に落ちてきた。
声だけで、また心臓が跳ねる。
彼の腕が、ゆるりと私の腰に回された。
「よく眠れた?」
『……うん』
すごく小さな声で答えると、彼はくすっと笑った。
その笑い方が、あまりにも優しくて、包み込むようで、心がまたぐらつく。
「……顔、赤いけど?」
『~~~~~~っ!』
やっぱりバレてた!!!!!
咄嗟に顔をシーツに埋めた私に、彼の手がそっと伸びてくる。
シーツ越しに頭を撫でられて、ますます逃げ場がなくなった。
「ねぇ……想花」
「……昨日が、はじめてだったんだろ?」
彼の声は穏やかで、でもすごく慎重だった。
私の気持ちを壊さないように、そっと触れるみたいに、優しい問いかけ。
少しだけ――ほんの少しだけ、顔を上げて。
『……当たり前、でしょ』
言ったあと、また真っ赤になって顔を背けた。
なのに、彼は黙って笑って、優しく私の頬を包んだ。
「……そっか」
その一言に、彼の全てが詰まってる気がした。
嬉しくて、愛しくて、どうしようもなくて。
私は彼の胸に顔をうずめたまま、ぎゅっとシャツを握る。
「ありがとな」
耳元で囁かれたその声が、涙が出そうなくらい優しくて。
「ほんとに……お前が俺に全部くれて、嬉しかった。嬉しすぎて、息できなかった」
彼の手が、背中をゆっくり撫でる。
「これから、何度だって愛すよ。昨日のぶんも、これまでのぶんも」
『……ばか』
小さく呟いた私の声に、彼がまた笑う。
『……ほんと、啓悟ってばか』
でも――
私はその“ばか”に、
世界で一番救われてる。