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【ヒロアカ】re:Hero

第13章 この手が届くうちに【R18】


『……はぁ……』

お湯に包まれた身体は、ぽかぽかと温かくて。
なのに、胸の奥だけ、まだ冷たいままだった。

鏡に映る自分の肌。
薄く残った傷。消えない感触。
どれも現実で、どこか夢の中みたいで。

それでも私は、タオルを巻いて
バスルームのドアをそっと開けた。

「想花」

彼が、いた。

タオルと、何かを手に持って。

「……おかえり。寒くなかった?」

『……うん。大丈夫』

震えてたのに、そう答えてしまう。
でも彼は何も言わずに、
ふわりと大きなバスタオルを肩にかけてくれた。

「ほら、これ。俺のだけど……着て」

彼のTシャツ。
少し大きめで、柔らかくて、優しい匂いがした。

『……ありがと』

そう言って、頭からかぶる。

乾いた髪が少し跳ねて、視界がすっと暗くなる。
でもすぐに、彼の匂いに包まれて――
胸が、きゅうっと締めつけられた。

着替え終えた私に、ホークスが小さく笑った。

「似合ってる。なんか、安心した」

その笑顔が、ずるいくらい優しくて。
私は思わず、ぽろっと涙をこぼしてしまった。

『……あっ、ごめん……』

「泣いていいよ。今日は、泣いていい」

そう言って、彼はそっと私の手を取る。

熱くて、しっかりしてて、
それでいて――どこまでも優しい指。

『……どうして、そんなに優しくしてくれるの』

「優しくしたいから、してるだけだよ」

『……私、全部壊れてたかもしれないのに』

「そう思ってるお前を、ちゃんと抱きしめてやりたいんだよ」

胸の奥で何かが崩れて、溶けていく音がした。

涙は止まらないのに、
あたたかい。

私は彼の手を、少しだけ、強く握り返した。
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