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【ヒロアカ】re:Hero

第13章 この手が届くうちに【R18】


目の前の彼女が、少しだけ震えながら、ぽつりと呟いた。

『……信じて、いいの?』

その言葉に、胸が締めつけられる。

信じてほしいに決まってる。
でも、そう簡単に言えるものじゃないってことも――
今の彼女を見れば痛いほど分かる。

『……また、同じことが起きたらって……怖いの』
『笑えなくなったら……ホークスまで、私を手放すんじゃないかって……』

掠れるような声に、心が刺された。

……誰が、そんなこと、できるわけない。

「何度だって、支えるよ」

俺はゆっくりと彼女の手を包み込んだまま、まっすぐに言葉を届けた。

「何度だって、受け止める。歩けなくなったら、抱えてでも進む」

少しでも信じてほしかった。
大丈夫って、思ってほしかった。

『……なんで、そこまで……』

また、そんな声が落ちてくる。

……本当に、まだ信じられないんだな。
それでも俺は、ちゃんと答える。

「決まってるだろ」

心の底から、嘘偽りなく。

「だって、お前が――俺の“帰る場所”なんだよ」

その瞬間、彼女の瞳が揺れた。
涙が零れて、頬を伝っていく。

ああ、泣かせちまったなって、分かってるのに……
その涙が、少しだけあたたかくて、
ほんの少しだけ前に進んだようで――

どうしようもなく、愛しかった。

『……ひどいよ……そんなこと言ったら……』

「泣いてんじゃん、想花」

『うるさい……』

それでも、彼女は微かに笑った。
ほんの少しだけ、口元が緩んだのを見逃さなかった。

『……でも、ありがとう』

「……うん」

たったそれだけの言葉が、
どんな救助より、どんな戦いより――
俺の心を、救ってくれた。

(大丈夫だ。きっと、取り戻せる)

もう一度、この手で。
彼女が大切にしてきたものを――全部、全部。
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