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【ヒロアカ】re:Hero

第13章 この手が届くうちに【R18】


ホークスside

『……来ないで』

その声が落ちた瞬間、足が止まった。
声色だけで、彼女の中がどれほど壊れているか、痛いほど伝わってくる。

『お願い……来ないで……!』

震える声。
それでも俺は――止まれなかった。

「……想花」

名前を呼ぶ。
何度だって、呼ぶ。
この声が、彼女の今に繋がってる証みたいに。

『触れないで……っ、私に……』

その言葉が、鋭く胸に刺さる。
けれど、それでも俺の手は止まらない。
今にも泣きそうな背中に、そっと、ただそっと熱を送るみたいに。

……ああ、違う。
本当に泣いてるのは、きっと俺の方だ。

『あなたまで……汚れてしまう』

違う。違うんだ。
君は――そんな言葉を吐くための人じゃない。
それでも、口を閉じさせることなんてできなかった。

『私、もう、汚れちゃったの…』

その一言で、
頭の奥が真っ白になる。
悔しいとか、悲しいとか、怒りとかじゃない。

ただ――痛い。

心の芯が、鈍く、静かに軋む。
守れなかった。
本当の意味で、俺はまだ、彼女を守れていなかった。

『笑われたの、壊されかけたの、ぐちゃぐちゃに……されそうになって――』

そのたびに、指先が震えた。
彼女の声が掠れるたびに、
どれだけの思いを、彼女が一人で抱えてきたのかが分かってしまって。

『あなたに、触れられた場所も……もう、無くなっちゃった』

『……大切な、思い出だったのに……』

その笑顔が、何よりも痛かった。
泣いてるのに、微笑む彼女。
それは“誰かを拒絶する”ための笑顔なんかじゃない。

――壊れてしまった心を、どうにか繋ぎ止めるための、最後の糸。

「……そんなこと、あるわけないだろ」

ようやく、口から漏れた声はひどく低かった。
震えを押し殺したのか、それとも――俺が壊れかけてるのか。

「俺は……」
彼女のすぐそばで、ただ、目線を合わせるように膝をつく。

「お前を抱きしめるために、ここまで来たんだ」

その傷も、涙も、全部受け止める覚悟を込めて。
もう、あの日のように君を一人にしないって、伝えるために。
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