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【ヒロアカ】re:Hero

第13章 この手が届くうちに【R18】


「……悪いけど、お前ら、今日はもう休め」

低く落ち着いた声だった。
でもその声の奥には、炎のような熱と、氷のような静けさが同居していた。
ホークスは背後でスマホを操作し、すぐに部下に指示を飛ばす。

「ホテル取らせる。今夜はそこで休んでくれ。……身体も、心も、もう限界だろ」

「……でも、俺たちは……」

轟の言葉を、ホークスは短く遮った。

「ありがと。お前らがいてくれて、心の底から感謝してる」

その言葉に、緑谷たちは息を呑む。
プロとして、仲間として、たぶんそれ以上の想いも、全部。

「でもな。今だけは、――俺が、想花を守る番だ」

その声は、とても静かだった。
それなのに、どうしようもなく重かった。

ほんの一瞬、爆豪が息を呑んだような気がした。
切島の目が、ぎゅっと細くなる。
そして、緑谷が小さく頷いた。

「……わかりました」

彼らはもう、何も言わなかった。
それが、最大の信頼だと、彼も分かっていた。

部下が静かに現れ、彼らを丁寧に誘導していく。
廊下に残されたホークスは、閉じた扉の前で、深く息を吐いた。

――今だけは、俺が傍にいなきゃいけない。
もう、目の前で失うわけにはいかない。

ノブに触れた手がわずかに震える。
けれど、それでも彼は迷わず扉を押し開けた。

中にいたのは――
あの日、自分の腕の中で眠った、誰よりも大切な子だった。

小さな背中。
縮こまった肩。
壊れかけた心と、壊されかけた記憶を抱えた少女が、
今、ほんの少しだけ安堵の色を纏って、そこにいた。

(……戻ってきてくれて、ありがとう)

胸の奥で、静かに呟く。

彼はもう、プロヒーローではなかった。
ただの“彼女を救いたい男”として、ゆっくりとその傍へ歩み寄る。

“ここにいるよ”
“もう怖がらなくていい”
“君は、君のままでいいんだ”

そう伝えるように――。
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