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【ヒロアカ】re:Hero

第13章 この手が届くうちに【R18】


『……っ』

床に押し倒された体が、重くなる。
動かせない。……いや、動かしたくない。けれど――

「……ここ、誰に触れられた?」

熱を孕んだ声が、私の耳元を撫でる。
その手が、頬に添えられるのと同時に、唇がゆっくりと近づいてきた。

『……やめて』

「ふぅん……そこ、ホークスか?」

『っ……っ!』

図星だった。あの日の記憶が、脳裏でふっと蘇る。
風の中で、そっと触れてくれた、あの優しい手の温度。
でも――

「だったら、上書きしてやんねぇとな」

『……っ!!』

逃げられないと悟った瞬間、荼毘の顔がすっと近づいてきて――
迷いも、ためらいもなく、唇を奪われた。

(やだ……っ!!)

その温度は、熱く、ざらついていて、
触れられるだけで、胸の奥が悲鳴をあげる。

それでも、私の体は反射的に動いた。

『ん……ッ!!』

ガブリ、と。

唇を押し返すように、荼毘の下唇を強く噛んだ。

「……ッはっ……!!」

一瞬、彼の体がびくりと震える。
でも、その直後。

「……マジかよ、お前……」

苦笑混じりの低い声が、耳のすぐ近くで落ちてきた。

「最高。……やっぱ、気に入ったわ」

舌で血を舐め取るように、唇をぬぐいながら、
彼の目がじわりと細められる。

「じゃあ今度は、爆豪に触れられた場所は……どこだ?」

『……っ』

「答えなくていいよ。探すから」

焼けるような視線が、鎖骨から首筋へと這ってくる。

あの日、助けてくれた手。
そっと抱きしめてくれた腕。
触れられた優しさを、今、荼毘の手がなぞろうとしていた。

まるでその記憶ごと、焼き尽くすかのように。

『……お願い……やめ、て……』

震える声は、ただ空気にかき消されていった。

それでも、私は叫びたかった。

──ここは、私の大事な記憶。
誰にも、壊させたくなんて、ないのに。
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