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【ヒロアカ】re:Hero

第13章 この手が届くうちに【R18】


想花side

『……っ、ぅ……』

重たい瞼が、ゆっくりと開いていく。
見慣れない天井。濁ったガラスの照明が、かすかに軋んで揺れていた。

頭が痛い。身体が鉛のように重い。
記憶の断片が、ひとつ、またひとつと浮かびあがって――

『……っ、勝己……!』

瞬間、跳ね起きようとして――それより早く、背中を誰かの腕に引き戻された。

「おっと……もうちょい寝とけよ、お姫様」

耳元で掠れるような声が落ちる。
その声を聞いた瞬間、背中に走る戦慄。

『……っ……荼毘……』

気づけば、ソファか何かに座らされ、背後から荼毘に抱き寄せられていた。
体の自由が利かないのは、まだ力が戻っていないからか、それとも――

「勝己ねぇ、飛ばしちまったからなぁ。 お前のその……綺麗な個性でさ」

指先が、首筋をなぞる。
優しいはずの仕草が、どこまでも冷たく、残酷だった。

『……っ……』

返す言葉が、喉の奥でつかえて出ない。

けれど、私は……確かにやり遂げた。

勝己を、あの場から逃がした。
みんなのもとへ、ちゃんと帰してみせた。

だから――

『……ふふ……ざまあ、みろ……』

うつむきながら、それでも笑ってみせた。
もう腕に力は入らないけれど、心まで折れたわけじゃない。

「へぇ……」

荼毘が、小さく笑う。
その声には、楽しそうな、けれど凍るような温度が混ざっていた。

「……そうやって笑える余裕が、どこまで続くか……見モノだな」

ぎゅ、と腕の力が増す。

痛い。苦しい。
それでも、私は目を逸らさなかった。

(みんな……どうか、無事でいて……)

まだ、終わってない。
この胸の奥で、火は消えてなんかいない。
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