第12章 あの日の夜に、心が還る
ぽつぽつと灯りがともる夜の合宿所。
焚き火の残り香と虫の音が、夏の夜を彩る中──マンダレイさんの声が明るく響いた。
「はいっ、A組全員、注目〜♡ これから肝試し大会をしまーす!」
「肝試し!?」「マジで!?」「夜に!?」
湧き上がるどよめき。テンションが急上昇するクラスメイトたち。
「もちろん、クラス対抗! A組は順番に、カップル──じゃなかった、ペアでB組が仕掛ける恐怖のコースを回ってもらいますっ♡」
『ぺ、ペアでって……!?』
ドキン、と心臓が跳ねた。
「よっしゃあああああ!!!任せろおおお俺ぜってー守るうう!!」
「誰と誰!?くじ!?くじか!?なぁ誰か俺と組もうぜ!!」
男子陣は大はしゃぎ。すでに祭りのような空気で、もうめちゃくちゃだ。
そして、運命のくじ引き。ひとりずつ引いていく中で──
「って、なんで俺がこいつとなんだよ!!!」
「……俺も嫌だけど」
一際大きな怒声が響く。
視線を向けると、勝己と焦凍が隣り合って立っていた。
『えっ、そのふたり!?やばすぎない……?』
と、そこに──
「ちょ、待ったぁぁああああああ!!!」
叫び声と共に、満月の下を突き破るように峰田くんが飛び出してきた。
「なんでヤオモモと星野がペアなんだよぉおお!!!A組の!!ツートップが!!もったいねぇええ!!てか俺と替われぇええ!!!」
『な、何言ってんのこの子……!?』
「うるせぇな……こっちは地獄なんだよ……」
と懐中電灯を投げつける勝己。それを無言で拾い上げる焦凍。
……ああもう、いろんな意味で不安しかない。
「ふたりとも、がんばってくださいね♡」
ヤオモモは優雅に笑い、私はそれに合わせて少し引きつった笑顔を返す。
『はぁ……なんかすでにこわい……』
「はいはーい、では〜!」
マンダレイさんがぱん、と手を鳴らす。
「A組のみんな、騒ぐのはそこまでっ♪ 順番にいくわよ〜。まずは……常闇くん&障子くん、スタート♡」
「……闇の共演」
「常闇……行くぞ」
ふたりが静かに夜の林へと歩き出す。
とたんに、さっきまでの喧騒がふっと鎮まって──空気が、変わった。
『……なんか、ほんとに始まるんだなぁ』
真っ暗な林の中へ続く道。
足元のライトの灯りが、かすかに揺れている。
胸の奥に、じんわりと熱いドキドキが広がっていく。
