第12章 あの日の夜に、心が還る
夜の山風がさらさらと湯気を揺らす、広々とした露天風呂。
星空の下、木の香りがほのかに漂う中で、私たち女子メンバーは肩までお湯に浸かっていた。
『ふぅ……しあわせ……』
お湯がじんわりと体の芯に染み込んでいく感覚に、自然とため息が漏れる。
「ね〜〜っ、こういうときの女子風呂って最高だよね〜♡」
お茶子ちゃんがぱちゃぱちゃとお湯をかいて、湯船の中でくるりと回る。
「うむ、筋肉の疲労が取れていく……」
葉隠さんが気持ちよさそうな声で言うと、八百万さんも「疲労回復にはやはり温泉ですね」と微笑んだ。
わいわいと声が弾んで、ぽかぽかの湯気のなか。
ふと、三奈ちゃんが私の方をじーっと見つめてくる。
「ていうかさ〜……想花って、脱いだらすごいよね!?」
『……はあ!?』
「だって〜、見た目じゃ全然わかんないけどさ〜!ねっ!?ねっ!?ヤオモモ!!」
「えっ、わ、私は……ええと、その……」
八百万さんが珍しく言葉を濁しながら、頬を赤らめる。
「なにその反応、絶対知ってるやつじゃん!!」
「ほら〜〜!!やっぱり〜〜!!」
「お前、制服じゃわかんなかったけど……すごいもんなぁ……」
耳郎ちゃんもにやりと笑って肩を寄せてくる。
『や、やめてってば〜〜!!!』
湯気の中、私は必死に胸まで沈んで小さくなったけど、周囲はもうお祭り状態。
「ヤオモモと想花のツートップ……」
「わたし、おっぱいになりた〜〜い!!」
「育ちって……罪だよね……!!」
『お願いだからやめて〜〜!!』
ぎゃあぎゃあと笑い声が弾けて、お湯がぱしゃぱしゃと波立つ。
耳郎ちゃんはすでにシャンプーボトルをマイクにして歌いだし、三奈ちゃんはタオルの端を振って踊り始めた。
『もうっ……ほんと、賑やかすぎる……』
でも、そんなわちゃわちゃした空気が、私はどこか嬉しかった。
肩の力を抜いて笑える時間。こうして、心から気を許せる仲間がいること。
──ずっと、忘れたくない。
ふわりと空を見上げれば、星がひとつ、瞬いた。