第11章 ドキドキ期末
試験を終えて戻った私を迎えたのは、
待っててくれたみんなの顔だった。
「おつかれさま〜〜!!」
「すげぇよ、星野!マジかっこよかった!」
切島くんが満面の笑みで手を振ってくれて、
瀬呂くんも隣でうんうんと頷いている。
『え、えへへ……ありがとう。見てたの?』
「そりゃ見るでしょ〜〜!もう始まる前から、全員そわそわしてたもん」
三奈ちゃんが笑いながら肩をぽんぽん叩いてくる。
どこか緊張していた心が、その一言でふわっとほどけた。
そして、少し離れたところにいた勝己が、
一度だけこちらを見て「……よくやったな」と、小さく呟く。
声にしないと伝わらないのに、声がなくても伝わってくるのが、ずるいと思った。
(みんな、ちゃんと見ててくれたんだ)
自分ひとりで戦ってたつもりだったけど、
終わった今、こうして迎えてくれる人がいることが何よりも嬉しくて──
『……おつかれさま、みんなも』
一人ひとりの顔を見て、自然と笑顔がこぼれた。
それからは、もう試験のことなんて忘れたみたいに、
「俺らの試験、やばくなかった!?」「いや、峰田くんのあの動きがさ〜!」なんて、
いつもの“わちゃわちゃ”が戻ってきて。
どこかのチームの失敗談で盛り上がって、
誰かのちょっとしたミスに大爆笑して、
「とりあえず、補修組はがんばれよな〜〜!」って。
ああ、終わったんだって、ようやく実感がわいた。
『……これで、林間合宿……行けるね』
その言葉に、一斉に「おおっ!」と歓声が上がる。
補修組はちょっとしょんぼりしながらも、それでも笑ってて──
それすら、もう愛おしく思えるくらいだった。
まるで、全員でひとつの物語を完走したみたいな気持ち。
疲れたけど、ちゃんとやり切った。
誰も欠けなかった。
それがなにより、嬉しかった。
もうすぐ、夏がくる。
きっと、あっという間に過ぎていくけど──
この瞬間だけは、胸に焼きつけておきたい。
『……みんな、おつかれさま』
たったそれだけの言葉に、全部の気持ちをこめた。