第11章 ドキドキ期末
男子side
リビングの明かりを落として、間接照明だけにしたら、
部屋の空気がふわりと柔らかくなった。
布団を並べて、全員ごろんと横になったけど、
なんとなく眠るには惜しいような空気が漂ってて──
誰からともなく、ぽつりぽつりと話し声が始まる。
「……なあ、星野って、ちゃんと寝てると思う?」
上鳴が布団の中からぼそっと言う。
「どうだろな。今日もずっと人に教えて回ってたし」
瀬呂が寝返りを打って、低く返す。
「昼間、ちょっとフラついてたもんな。顔、疲れてた」
切島も心配そうに言って、顔だけ起こす。
勝己は何も言わずに、少しだけ首を傾けて──
想花のベッドのほうを見る。
彼女はもう、すぅすぅと穏やかな寝息を立てていた。
まぶたは伏せられ、髪がふわりと枕に広がっている。
「……寝るの、いっちばん早ぇじゃねぇか」
勝己が小さく吐き捨てるように呟いて、
でもその声音はどこか、優しかった。
「……頑張ってたもんな、ずっと」
「お前にまで色々任せてたしな。……ありがとな、爆豪」
「……チッ、別に、勝手にやっただけだ」
照れ隠しに勝己がそっぽを向くと、
上鳴がふっと笑いながら布団に潜り込む。
「想花ちゃん、すげーよな。
どんな時も、ちゃんと俺たちのこと見てくれてて」
「……ああ。ほんと、感謝しかない」
「おまえら、うるせぇ。さっさと寝ろ。
明日の朝メシ、あいつのためにも片付けとくぞ」
「おっ、いいねそれ!女子には朝ゆっくりしてほしいよな!」
「誰より主婦目線じゃねぇか、上鳴」
くすくすと笑いが混じる声。
でもその真ん中には──
静かに眠る、あたたかな存在がいた。
守りたくなるような、その寝顔。
誰よりも強く、誰よりも優しくあろうとする背中。
「……寝顔、無防備すぎてやべぇな」
ぽつりと誰かが言った。
「……けどさ。こういう瞬間のために、頑張れんだよな」
返事の代わりに、ふと空気が静まった。
みんなそれぞれ、まぶたを閉じながら──
明日もまた、このあたたかさを守りたいと思っていた。