第11章 ドキドキ期末
ハンバーグが焼ける、じゅわっという音。
横で勝己が無言でソースを作っていて、
その背中を見ながら、私はそっと笑った。
『…うん、完璧。できたよ』
声をかけると、勝己が火を止めて、黙ってうなずく。
言葉はなくても、「これでいいだろ」って伝わってくるその顔が、ちょっと誇らしげだった。
リビングでは、プリント地獄に呻いてた3人が今か今かと待ち構えてて──
「おお〜〜!!まじ!?もう飯!?」
「かっちゃんの出題量に腹減らされすぎて……限界!」
「俺もうプリント破くとこだった……!」
『ちょ、ちゃんと復習してた?』
「してたしてた!だから腹減ったんだって!」
半ば言い訳みたいに言いながら、切島くんと瀬呂くんがテーブルへ。
上鳴くんは既に箸をスタンバイして「わ〜〜最高〜〜!」って笑ってる。
勝己が皿を運び、私は野菜とスープを添える。
いつものリビングが、ちょっとだけレストランみたいに見えた。
『じゃあ……いただきます!』
「いただきまーす!!」
「うまそ〜〜!!」
「うわ、やっべ……これ、やばい……」
「ハンバーグ、最強かよ……!」
ぱくぱく食べる音と、止まらない感嘆の声。
思わず私も、嬉しくなってほっぺがゆるんだ。
『よかったぁ……ちゃんと、間に合って』
「……当たり前だろ」
ふと隣を見ると、勝己がぽつりと呟く。
ハンバーグはもう半分以上なくなってて、その食べっぷりが微笑ましかった。
『こうしてみんなで食べるの、なんか……いいね』
なんてことなく言ったつもりが、自分の胸にぽつんと落ちてくる。
自然と目が伏せがちになる。
──この感じ、なんだろう。
疲れた放課後。にぎやかな声。誰かと囲む食卓。
なんでもない今日が、すごくあたたかい。
まるで、家族みたいで。
『……また、こういう日があったらいいな』
「あるだろ、期末終わるまで」
「ってか、終わってもまた来るけど?」
「星野の飯があるなら、毎日でも!」
わいわいと返ってくる声に、胸がきゅっとなった。
……そうだね、またきっと。
こんなふうに笑って、食べて、励まし合って──
この日々が、ずっと続けばいい。