第4章 優しさの証
演習場に設置された巨大モニターの前で、私は静かに息を呑んだ。
そこに映し出されているのは、今まさに行われているチームバトルの光景。
爆豪くんと飯田くんが防衛側、そして緑谷くんとお茶子ちゃんが攻撃側のチームとして戦っている。
爆豪くんは、ロケットの前で唸るように叫んだ。
「かかってこいやぁ!!」
その声に、私の心もびりっと揺さぶられる。
画面越しでも伝わってくる、彼の怒りと熱――いや、あれはきっと、それだけじゃない。
緑谷くんは、信じられない力で壁をぶち抜き、爆豪くんに向かって突っ込んでいく。まるで、全身を叩きつけるような一撃。
(……あの力、一体……)
誰もが驚いていた。
彼の“個性”が何なのか、詳しくは誰も知らない。ただ、圧倒的な“超パワー”であることは明らかだった。
でもそれ以上に、彼の動きには、何かを“守り抜こうとする覚悟”が滲んでいて。
お茶子ちゃんもまた、飯田くんのスピードに食らいつきながら、確かな判断力で戦場を切り開いていく。
(強い……みんな、すごく強い)
私は、胸の奥がぎゅっと締め付けられるのを感じていた。
勝ちたい。負けたくない。でも、それだけじゃない。
みんな、それぞれに“譲れない何か”を抱えて、この場に立ってる。
画面の中で、爆豪くんの一撃を受けてもなお立ち上がろうとする緑谷くんを見たとき、私の喉の奥が熱くなった。
(……あれが、ヒーロー)
誰よりもボロボロになりながら、誰かのために進もうとするその姿に、私は目が離せなかった。
戦いが終わりに近づくと同時に、観戦モニターの周囲がざわつき始める。
「次のチーム、準備!」
その声に、私はハッと我に返った。
(次は、私たちの番)
身体が自然と前に出る。呼吸が少し早くなる。
でも不思議と、怖くはなかった。
私も、ちゃんと――あの戦場に立ちたいって思っていた。