第4章 優しさの証
「今日のメインは、ペアを組んでの戦闘訓練だ!ヒーロー組と敵(ヴィラン)組に分かれて、屋内線をしてもらう!各自、自分の力を出し切れ!!」
オールマイトの声が、演習場の空気を一瞬で引き締めた。
今までの笑顔が嘘のように、みんなの表情が変わる。私の胸の奥にも、キュッと強い緊張が走った。
(ペア戦……誰と組むんだろう)
落ち着こうと深呼吸してみても、心臓の鼓動は早まるばかり。
でも、不思議と――怖くはなかった。
“ヒーローとしての自分”が、ここから始まる。
まだ頼りないかもしれないけれど、私も誰かの力になれるなら……。
そっと拳を握りしめて、私は空を見上げた。
高く広がる演習場の天井すら、今はまるでステージのように感じる。
そのとき、オールマイトが続けた。
「今回は2対2のチーム戦だが、人数の関係で――ひとつだけ、3人チームがある」
周囲がざわっとざわめく。
「星野想花、葉隠透、尾白猿夫。君たち3人だ」
私は名前を呼ばれた瞬間、胸がふっと軽くなった。
すぐそばで、葉隠ちゃんがパッと明るく声をあげる。
「やったー!よろしくねっ!」
姿は見えないけれど、手を振ってくれているのがわかる。
尾白くんは穏やかにうなずいて、静かな目で私を見守ってくれた。
私はふたりに軽く会釈して、にこりと笑った。
『うん、よろしくね。……一緒に、頑張ろう』
オールマイトが厳しい声で告げる。
「3人チームの場合、成績上位者1人は個性を封印。身体能力のみで戦うこととする」
思わず、周囲から小さな驚きの声が漏れた。
でも、それが“平等な条件”なんだろう。私は静かにうなずいた。
「一緒にカバーしようね!」
葉隠ちゃんの前向きな声に、私も自然と笑みがこぼれる。
「俺たちなら、やれると思う」
尾白くんの静かな励ましが、心にじんわり染みた。
そして次に発表されたのは――
「対戦相手は、轟と障子目蔵だ」
一瞬、演習場の空気が凍った気がした。
(轟くんと障子くん……)
間違いなく、強敵。いや、それ以上に“隙がない”組み合わせ。
でも、それでも――
(これが、初めての試練。負けられない…!)
私はゆっくりと息を吸って、もう一度、拳をぎゅっと握りしめた。
仲間とともに、この一歩を踏み出すために。
そして、私がここにいる意味を、ちゃんと証明するために。