第11章 ドキドキ期末
午前の授業が終わったチャイムの音が、ようやく息を吐く隙をくれた。
ペンを置いて、小さく伸びをひとつ。
それに合わせるように、後ろからお茶子ちゃんが声をかけてきた。
「お昼、今日も定食にしよっか!」
『うん、いこう』
日差しが差し込む廊下を、いつものメンバーと歩く。
何気ない、でもどこか特別なこの時間が、週の終わりを感じさせる。
食堂まであと数歩というところで──
「失礼、ヒーロー科1年A組の“想願の乙女”!未来を照らす多才なる救世主!」
前触れもなく差し込まれた手。
『えっ、え!?』と戸惑う間もなく、私はまるで風にさらわれるように、腕を引かれていた。
「あー!ちょ、物間くん?!」
「待って、どこ行くの!?想花ちゃん!」
お茶子ちゃんたちの声が後ろで霞んでいく。
正面に見えるのは、B組の制服──そして、その中心でニヤリと笑う金髪の男子。
「さあさあ、我らがB組が誇る“友情の架け橋”、あなたの力を貸してもらおうじゃありませんかぁ〜〜!」
『ちょ、ちょっと!?』
そのまま勢いに任せて連れてこられたのは、食堂の一角。
鉄哲くん、拳藤ちゃん、回原くん、そして小森さんや庄田くんまで。
懐かしくてどこか騒がしい面々が、勢ぞろいしていた。
「よう来たな!」
「ほんとに来るとは思わんかった〜」
「いや〜物間、ナイス〜〜!」
『え、え、ちょっと待って!?なにこの空気!?』
席を用意されるまま、ぽすんと座らされる。
目の前には、なぜか広げられたノートと教科書たち。
物間くんはすました顔で、紅茶なんか飲みながらこう言った。
「期末試験まであとわずか……B組の未来は君の双肩にかかってる!」
『いやいやいやいや!!私、担いだ覚えないんだけど!?』
「まぁまぁ、お願い〜!A組ってさ、いつも上位多くてズルいしさ!」
拳藤ちゃんまで目を潤ませるから、もう断れない空気になってるし。
隣で鉄哲くんなんて「俺、光の個性わかんなくてさ!」とか言い出すし。
──昼休みの始まり。
まさか、こんな展開が待っているとは思わなかった。
でも。
笑い声が響くこの空間も、なんだかちょっと、悪くない。