第11章 ドキドキ期末
―――放課後。
『……よし、今日はもう帰ろ──』
「星野ぁぁぁぁ!!たすけてくれえぇええ!!」
夕焼けに染まる廊下に、全力の声が響いた。
振り返ると、ノートを両手で抱えた上鳴くんが、猛スピードでこっちに走ってくる。
『え、え? ちょ、ちょっと?』
「無理マジ無理!なんだよこの数式!なんだよ“単元まとめテスト”!文字の暴力じゃん!俺に優しくしてよ!!」
『し、しらないよ!私に言われても!』
そのまま腕をつかまれ、引き戻されるように教室へ。
既に中には、切島くんと瀬呂くんが机を並べて何かやってて──
「うお、連れてきた!?マジで!?やった〜〜!!」
「いや、オレらも限界だったんだって。マジ救世主」
『うぅ、も〜……。わかった、わかったから。
今日だけだよ?明日からはちゃんと自力でやってよ?』
「へいへい女神〜!星野大先生〜!一生ついてくわ〜!」
『軽っ!!』
後ろの席で、ずっと黙ってた勝己がふと顔を上げる。
「騒がしぃんだよ。……けど、想花の教え方はわかりやすい」
『え、えっ、ほんと?』
「さっさとやるぞ。赤点組に混ざるのは御免だからな」
そう言って、自分のノートを机に広げる勝己の背中が、
なぜかちょっとだけ頼もしく見えた。
『……じゃあ、まずはこの問題からにしよっか』
こうして私の“帰り道”は、ほんの少しだけ遠回りになったけど。
この夕焼けの教室に満ちる笑い声と、紙の音と、
ちょっとずつ積み重なる“青春”は──
それだけで、今日一日を幸せにしてくれた。