第11章 ドキドキ期末
『……ん〜、お腹すいた〜……』
午前中の授業を終え、伸びをしながら教室を出たその瞬間だった。
「おーい、星野ー!」
廊下の向こうから聞き慣れた明るい声。
手を振って駆け寄ってきたのは、上鳴くん。
その後ろには切島くん、瀬呂くん、そして何故か無言で歩く勝己の姿も。
「ちょうどよかった!今から食堂いくとこだったんだけどさ、よかったら一緒にどう?」
『え、わたし?』
「だって今日、テレビに出てた有名人っしょ?ヒーロー事務所でバチバチ活躍してきたんだろ~?」
「お前の武勇伝、昼メシ食いながら聞かせろよ」
切島くんが笑って拳を軽くぶつけてくる。
「……どーせ、派手にやらかしてきたんだろ。見てやるよ、ヘラヘラ顔」
『えっ、ちょっと、それ嫌な言い方じゃない……?』
なんて言いながらも、みんなが誘ってくれるのは素直に嬉しかった。
でも──ふと思い出す。
『昼休みにでもゆっくりやろっか。食堂で』
──さっき、常闇くんとした約束。
『……ごめん、ほんとは一緒に行きたいんだけど、ちょっと約束があって』
「……そっか、じゃあまた今度だな!」
切島くんがあっさりと笑って返してくれた。
「ったく、変に真面目だよな、お前」
勝己はそう言ってそっぽを向くけど、どこか否定しない感じが優しい。
「んじゃ、また誘うからな~!」
上鳴くんが軽く手を振って、4人はそのまま食堂へ向かっていった。
『……ありがと、みんな』
少しだけ胸があったかくなる。
廊下を曲がって、見慣れた後ろ姿を見つけた。
──常闇くん。もう食堂の入り口で、こちらを振り返っていた。
『待たせちゃったね』
「……いや、お前が来てくれたなら、それで充分だ」
ふたり並んで歩き出す。
昼のざわめきの中でも、どこか静かな時間だった。
『さて、英語の長文問題、今日こそは克服してもらうよ〜!』
「……ふ、覚悟しておく」
笑い合いながら、私たちは食堂のテーブルへ向かった。